職場トラブル・賃金未払い通報
オーストラリアで働いていて賃金未払い・不当解雇・職場の安全・差別の問題に遭ったとき、どこに・どのように助けを求め通報するかをご案内します。まず、ビザの種類にかかわらず同じ基本的な労働の権利があることを覚えておいてください。
このガイドは、オーストラリアで働いていて賃金未払い(underpayment)・不当解雇・職場の安全・差別の問題に遭ったとき、「どこに、どのように」助けを求め通報するかをご案内する一般情報です。法的助言ではなく、個別の事案への適用可否・申請期限・制度名・電話番号は変わることがありますので、必ず各機関の公式ウェブサイトで最新の内容をご確認いただき、必要に応じて弁護士または登録移民代理人(registered migration agent)にご相談ください。
オーストラリアで働く人は、ビザの種類にかかわらず同じ基本的な労働の権利を持ちます —— この点をまず覚えておいてください。
通報するとビザが取り消されますか?(まず不安を解消)
最もよくある心配です。オーストラリアの働く権利(最低賃金・手当・休暇・安全)はビザの種類にかかわらず同じように適用されます。ワーキングホリデー・学生ビザ・臨時ビザで働いても同じ保護を受けます。「臨時ビザだから」「英語が不十分だから」は賃金を減らしたり権利を奪ったりする法的根拠にはなり得ません。雇用主が「通報すればお前だけビザが取り消される」と言うのは、通報を止めるためによく使われる脅しです。
オーストラリア政府は、搾取を通報するビザ保持者を保護するための制度を運用してきました。かつて「Assurance Protocol」と呼ばれた制度は、2つのパイロット(Strengthening Reporting Protections Pilot、Workplace Justice Visa Pilot)を運用するために一時中止(paused)されており、保護の範囲・条件・現在適用されるプログラムは変わり続ける可能性があります。したがって「通報すれば必ずビザが安全」と断定せず、ご自身の状況に適用される現行の制度と条件は Fair Work Ombudsman のビザ保護ページと Department of Home Affairs の公式案内で直接ご確認ください。不安であれば通訳(131 450)を利用してでも、まず問い合わせてみるのがよいでしょう。
今すぐすべきこと —— 証拠の収集
通報や相談の前に、まず証拠を集めて記録を保存してください。時間が経つと確保が難しくなり、記録がないと未払い賃金を請求する際に立証が困難になります。
- ① 勤務時間の記録 —— 働いた日付・出退勤時刻をメモ/カレンダー/写真で自分で残す(Fair Work Ombudsman の「Record My Hours」アプリを活用可能)
- ② 給与明細(payslip)の確保 —— オーストラリアの雇用主は、賃金支払い後通常1営業日以内に payslip を提供する義務があります。受け取った明細はすべて保管してください。明細を渡さない現金の仕事(cash in hand)は、それ自体が危険信号です。
- ③ 賃金の振込履歴 —— 銀行口座の入金記録。現金で受け取った場合は、受け取った金額・日付をメモしてください。現金払いでも、最低賃金・税・年金(Super)の義務は同じように適用される場合があります。
- ④ 雇用関連の書類 —— 雇用契約書、勤務表(roster)、メール・SMS・メッセンジャーなど業務指示のやり取り
- ⑤ 雇用主情報 —— 商号・ABN・住所、証人になり得る管理者・同僚の名前と連絡先
自分が受け取るべき正確な金額(最低賃金・Award の基準)が気になる場合は、「給与(Salary)ガイド」と Fair Work Ombudsman の Pay Calculator(P.A.C.T.)をあわせてご確認ください。
何をどこに通報しますか?
問題の種類によって担当機関が異なります。
- 賃金未払い・未払い・手当・休暇・payslip 未交付・労働条件違反 → Fair Work Ombudsman(FWO)、電話 13 13 94。匿名通報と通訳に対応しています。
- 不当解雇(unfair dismissal) → Fair Work Commission(FWC)。申請の締め切りが非常に短く厳格です(解雇の効力発生日の翌日から21日 —— 下記参照)。
- 権利行使に対する報復・差別(general protections) → Fair Work Commission(FWC)。(解雇を伴う場合は21日の期限、それ以外は期限が異なる場合がありますので FWC でご確認ください)
- 職場の安全・労災 → 事業所が所在する州(state)の SafeWork 機関(例:NSW = SafeWork NSW 13 10 50、VIC = WorkSafe Victoria など —— 州ごとに機関・番号が異なります)。
- 差別・嫌がらせ(人種・性別・年齢・障がい・出身国など) → Australian Human Rights Commission(AHRC) 1300 656 419、または州ごとの反差別機関。
どこに行けばよいか分からなければ、まず FWO(13 13 94)に問い合わせても構いません。(各機関との通話時に通訳をあわせて使えます —— 下記「母語で通報」参照)
チャネル別の詳細 —— FWO と FWC の21日期限
Fair Work Ombudsman(FWO、公正労働オンブズマン):賃金未払い・未払い、手当、休暇、労働条件違反を扱う連邦機関です。受け取るべき賃金・手当を受け取れなかったり、最低基準より低い場合は、電話 13 13 94 または fairwork.gov.au で問い合わせ・通報できます。身元を明かしたくない場合は、匿名通報(Anonymous Report)ツールを使えます。
Fair Work Commission(FWC) —— 不当解雇の21日期限
不当に解雇されたと思う場合は fwc.gov.au で不当解雇(unfair dismissal)の申請ができますが、解雇が効力を発生した日の翌日から21日(calendar days、暦日)以内という非常に厳格な締め切りがあります。週末・祝日もこの期間に含まれ、21日目が週末・祝日であれば翌営業日まで可能です。
期限を過ぎると例外的(exceptional circumstances)な事由がない限り受付が難しい場合がありますので、早めに動いてください。正確な締め切りの計算と資格要件は必ず FWC 公式ページで確認し、ガイドの説明をそのままご自身の期限計算に当てはめないでください。
チャネル別の詳細 —— SafeWork(安全・労災)と AHRC(差別)
職場の安全・労災
安全でない作業環境であったり負傷した場合は、事業所が所在する州(state)の SafeWork 機関に連絡してください。機関名・電話番号は州ごとに異なります —— 例:NSW は SafeWork NSW(13 10 50)、VIC は WorkSafe Victoria など。ご自身が居住/勤務する州の SafeWork または WorkSafe の公式サイトで通報方法をご確認ください。(全国の情報は safework.gov.au)
差別・嫌がらせ
人種・性別・年齢・障がい・出身国などを理由とする差別や嫌がらせは、Australian Human Rights Commission(AHRC、オーストラリア人権委員会)に申し立てができます。問い合わせは電話 1300 656 419、正式な申し立ては書面(オンライン)で受け付け、費用は無料です。事案によっては州ごとの反差別機関も利用できます。
英語が難しくても母語で通報できます(★通訳・翻訳 —— 無料)
英語が負担で通報を後回しにしないでください。オーストラリア政府が運用する無料通訳サービス TIS National(Translating and Interpreting Service、電話 131 450)を利用すれば、韓国語・中国語・日本語・ベトナム語・フランス語・スペイン語などの母語で政府・公共機関と通話できます。政府機関との通話では通訳が無料でつながる場合がありますので、通訳費用の心配で手続きを後回しにしないでください。
電話通報の流れ
- 方法1:Fair Work Ombudsman(13 13 94)に電話して「I need an interpreter([言語]の通訳が必要です)」と依頼すると、職員が TIS 通訳者をつなぎ、3者通話で通報できます。
- 方法2:まず TIS National(131 450)に電話して使用する言語を伝えたあと、つなぎたい機関の番号(例:FWO 13 13 94)を伝えると、通訳者が一緒に通話します。(TIS は通訳仲介サービスのため、131 450 は Fair Work の直通番号ではありません。)
同じ方法で FWC・SafeWork・AHRC との通話にも通訳を使えます。
ウェブ・翻訳資料
Fair Work Ombudsman のウェブサイトは複数言語の案内ページ(in-language pages)と翻訳された資料(translated fact sheet)を提供し、韓国語・中国語・日本語・ベトナム語など英語以外の言語でも直接匿名通報を受け付けています。母語で自分の権利と通報方法をまず読んでおくと、電話での通報がずっと楽になります。fairwork.gov.au で言語(Languages)メニューを探してみてください。無料の法的支援が必要な場合は、お住まいの地域の Community Legal Centre や所得資格審査を経る Legal Aid を利用でき、これらの機関との通話にも TIS(131 450)通訳をあわせて使えます。
ビザ労働者の保護 —— 匿名通報と報復防止
匿名通報
身元を明かしにくい場合は Fair Work Ombudsman の匿名通報(Anonymous Report)ツールを利用でき、英語以外の複数言語に対応しています。ただし匿名通報には、▲通報後に別途返信が来ない ▲納税者番号(TFN)は入力してはならない ▲書類・写真は添付できない、という制約があります。ご本人が直接支援を受けたり未払い分を取り戻したりするには、名前を明かして FWO に連絡するか、労働組合・専門家への相談もあわせてご検討ください。(つまり、匿名通報だけですぐにお金を取り戻せるわけではありません。)
報復防止
賃金を問い合わせたり通報したりしたことを理由に、解雇・減給・勤務時間の削減などの報復をすることは法律で禁止されており、こうした報復は Fair Work Commission の一般保護(general protections)で争うことができます。
ビザ保護
前述のとおり、搾取を通報したビザ保持者のための保護制度が運用されています(現在一部はパイロットに置き換え・強化されています)が、保護には条件と制約があります —— 例えば「労働禁止(no work)」条件の違反や、詐欺・人物(character)・国家安全保障など他の取消事由まで保護するわけではありません。ご自身の状況に適用されるかは事案ごとに異なりますので、FWO のビザ保護ページと Home Affairs の公式案内で確認し、ビザがかかる複雑な事案は弁護士・登録移民代理人にご相談ください。
公式情報源リンク
- Fair Work Ombudsman (13 13 94)(新しいウィンドウで開く)
賃金・手当・労働条件の通報、匿名通報、多言語資料(電話 13 13 94)
- Fair Work Commission(新しいウィンドウで開く)
不当解雇・一般保護の申請(解雇の効力発生日の翌日から21日の期限)
- TIS National (131 450)(新しいウィンドウで開く)
政府・公共機関との通話用の無料通訳(電話 131 450)
- Australian Human Rights Commission (1300 656 419)(新しいウィンドウで開く)
差別・嫌がらせの申し立て(電話 1300 656 419)
- SafeWork (safework.gov.au)(新しいウィンドウで開く)
職場の安全・労災 —— 居住する州ごと(SafeWork NSW・WorkSafe Victoria など)
- Department of Home Affairs(新しいウィンドウで開く)
ビザ労働者の権利・通報保護の案内
各サイトで最新の手続き・期限・制度名を必ずご確認ください。
よくある質問
通報すると私のビザが取り消されますか?▾
オーストラリアの働く権利(最低賃金・手当・休暇・安全)は、ビザの種類にかかわらず同じように適用されます。「臨時ビザだから」「英語が不十分だから」は権利を奪う法的根拠にはなり得ず、「通報するとビザが取り消される」はよく使われる脅しです。政府は搾取を通報したビザ保持者のための保護制度を運用してきました(現在一部はパイロットに置き換えられています)が、条件と制約があるため、ご自身の状況は Fair Work Ombudsman のビザ保護ページと Department of Home Affairs の案内でご確認ください。不安であれば通訳(131 450)でまず問い合わせてみてください。
匿名で通報すればすぐにお金を取り戻せますか?▾
いいえ。匿名通報(Anonymous Report)は英語以外の複数言語に対応していますが、通報後に返信が来ず、納税者番号(TFN)は入力してはならず、書類・写真を添付できないという制約があります。直接の支援を受けたり未払い分を取り戻したりするには、名前を明かして FWO に連絡するか、労働組合・専門家への相談もあわせてご検討ください。
不当解雇はいつまでに申請しなければなりませんか?▾
不当解雇(unfair dismissal)は Fair Work Commission(fwc.gov.au)で申請し、解雇が効力を発生した日の翌日から21日(暦日)以内という非常に厳格な締め切りがあります。週末・祝日も含まれ、21日目が週末・祝日であれば翌営業日まで可能です。期限を過ぎると例外的な事由がない限り受付が難しい場合がありますので、正確な計算と資格要件は FWC 公式ページで確認し、早めに動いてください。
英語が難しいのですが、どのように通報しますか?▾
政府が運用する無料通訳 TIS National(131 450)を利用すれば、韓国語・中国語・日本語・ベトナム語などの母語で政府・公共機関と通話できます。FWO(13 13 94)に電話して「I need an interpreter」と依頼するか、まず TIS(131 450)に電話して言語とつなぎたい機関の番号を伝えると、通訳者が3者通話でつないでくれます。FWO のウェブサイトは複数言語の案内ページや翻訳資料も提供しています。