処方箋・薬局・PBS 薬代
オーストラリアで薬を受け取るには通常、処方箋(script)が必要で、PBS(Pharmaceutical Benefits Scheme)が資格者の薬代を大きく補助します。処方箋の受け取り方から薬代の仕組み、Medicare・RHCA の資格による違いまでを一目で整理しました。
この記事は、オーストラリアに居住・滞在する外国人が処方箋と薬局、PBS 薬代制度を理解できるよう手助けする一般的な情報です。医療・法律・移民に関する助言ではありません。
PBS 薬代(2026 年 1 月 1 日時点で一般 $25、concession $7.70)、Safety Net の上限、RHCA の適用国・範囲は毎年変動する可能性がありますので、実際の金額・資格は必ず公式サイト(pbs.gov.au、servicesaustralia.gov.au)でご確認ください。
1. 処方箋(script)はどうやって受け取りますか?
オーストラリアでは、抗生物質・血圧の薬・避妊薬など多くの薬は処方箋(prescription、よく 'script' と呼ばれます)がなければ薬局(pharmacy / chemist)で受け取れません。処方箋は通常、次の手順で受け取ります。
- GP(一般医)の予約・受診:近所の GP クリニックを予約して受診します。医師が必要と判断すれば処方箋を発行します。GP の探し方はMedicare・病院利用ガイドをご参照ください。
- 電子処方(eScript)または紙の処方箋:最近は医師が eScript を携帯のショートメッセージ(SMS)やメールで送ってくれます。リンクの中にトークン(QR コード)が入っており、このトークンを薬局で見せればよいです。希望すれば紙の処方箋も受け取れます。
- 薬局への提出:eScript のトークンまたは紙の処方箋を近くの薬局に提出すると、薬剤師が薬を調剤してくれます。ほとんどの薬局が eScript に対応しています。
- 薬の繰り返し調剤(repeats):処方箋に 'repeats' と書かれていれば、薬が切れたときに同じ処方で再度受け取れます。repeats が終わると、GP を再び受診して新しい処方箋を受け取る必要があります。
処方箋が不要な一般の薬(鎮痛剤・風邪薬など)は処方箋なしで購入できます(下記 7 番をご参照ください)。
2. PBS は薬代をどれだけ安くしてくれますか?
2026 年 1 月 1 日時点 ── Medicareカード所持者の PBS 薬代の自己負担(co-payment)は、一般患者で最大 $25、concession(割引)カード所持者で最大 $7.70 です。金額は毎年変動する可能性があるため、公式サイトでご確認ください。
PBS(Pharmaceutical Benefits Scheme)は、オーストラリア政府が薬代を補助する制度です。PBS に収載された薬は政府が大部分を負担し、患者は定められた自己負担(co-payment)のみを支払います。
- 一般患者(general):PBS の薬 1 件あたり最大 $25(2026 年 1 月 1 日時点、以前の $31.60 から引き下げ)。
- 割引カード所持者(concession):Health Care Card・Pensioner Concession Card・Commonwealth Seniors Health Card などがあれば 1 件あたり最大 $7.70。concession は 2026 年に引き上げられず、2029 年まで維持される予定です。
- 薬代が自己負担より安い場合:薬の実際の価格が $25 より低ければ、その低い金額のみを支払います(補助が付かない場合があります)。
- 2026 年の変更点:一般患者に適用されていた薬局の任意割引($1)は廃止されました。ただし薬剤師の裁量割引(discretionary discount)は一部の薬に適用される場合があります。
重要:この補助を受けるには、Medicareの資格または RHCA の資格が必要です(下記 3 番)。資格がない場合、薬代の全額を支払うことになる場合があります。
3. RHCA(相互医療協定)・Medicareの資格で薬代が変わりますか?
PBS 薬代の補助は、Medicareの資格がある人、またはオーストラリアと RHCA(Reciprocal Health Care Agreement、相互医療協定)を結んでいる国からの訪問者に適用されます。
- Medicare資格者:永住者、一部の一時ビザ所持者(資格を満たす場合)、市民権者などはMedicareカードで PBS 薬代の補助を受けます。
- RHCA 国の訪問者:オーストラリアは 11 か国と RHCA を結んでいます ── ニュージーランド(New Zealand)、アイルランド(Ireland)、イギリス(United Kingdom)、スウェーデン(Sweden)、オランダ(Netherlands)、フィンランド(Finland)、イタリア(Italy)、ベルギー(Belgium)、ノルウェー(Norway)、スロベニア(Slovenia)、マルタ(Malta)。これらの国のパスポート所持者は「医学的に必要な」診療と一部の PBS 薬を一般料金で受けられます。
- 登録の手続き:ほとんどの RHCA 国の訪問者は Services Australia でMedicareに登録しないと給付を受けられません。ただし、ニュージーランド・アイルランドの訪問者は登録なしでも公立病院・PBS 薬を利用できます(MBS 診療は除く)。
ご自身の国が RHCA の対象か、ご自身のビザがMedicare資格になるかは servicesaustralia.gov.au でご確認ください。
Medicare・RHCA の資格がないと薬代の全額を支払うことがあります
観光ビザ・一部の一時ビザなどでMedicare資格も RHCA 資格もない場合、PBS 補助が適用されず、薬の実際の全額(private price)を支払うことになる場合があります。一部の薬は全額が数十~数百ドルに達します。このような場合、海外訪問者健康保険(OVHC)が薬代の一部を補える場合がありますので、加入の約款をご確認ください。高価な薬は薬局ごとに価格が異なる場合があるため、事前に問い合わせると役立ちます。
4. Safety Net ── 1 年で薬代が一定額を超えると安くなります
PBS Safety Net は、1 年間に薬代が多くかかった人のための追加の保護策です。同じ年(1 月~12 月)にご本人・ご家族が支払った PBS 薬代が上限を超えると、その後は安くなるか無料になります。
- 一般患者の上限(2026):$1,748.20。この金額を超えると、その年の残りの期間 PBS 薬を concession 料金($7.70)で受け取ります。
- concession カード所持者の上限(2026):$277.20。この金額を超えると、その年の残りの期間 PBS 薬を無料で受け取ります。
- Safety Net Card / 記録:同じ薬局を継続して利用すると、薬剤師が薬代の累計を記録してくれます。複数の薬局を使う場合は、薬剤師に Prescription Record Form を依頼して合算できます。家族単位で合算されますので、同じMedicare/家族の記録かどうかご確認ください。
上限金額は毎年変動しますので、pbs.gov.au または servicesaustralia.gov.au で最新の値をご確認ください。
5. eScript・repeats・60 日処方 ── 薬局への再訪を減らす
eScript(電子処方)の使い方
医師が送ってくれた SMS・メール内のトークン(QR コード)を薬局で見せるか、トークンを薬局へ直接送信すればよいです。eScript を複数管理するには、薬剤師に Active Script List(ASL)の設定を依頼してください ── トークンを一つひとつ見せなくても、有効な処方を一つのリストで管理できます。トークンを誤って消してしまった場合は、医師に再送を依頼すればよいです。
repeats(繰り返し調剤)
処方箋に repeats があれば、薬が切れたときに再び GP を受診しなくても同じ薬を受け取れます。repeats の回数が終わると、新しい処方箋を受け取るために GP を再び受診する必要があります。希望すれば、薬剤師に残りの repeats を紙で出力してもらえます。
60 日処方(60-day prescriptions)
状態が安定している慢性疾患(血圧・コレステロールなど)の患者には、医師が2 か月分を一度に処方できる薬が 300 種類以上あります。該当すれば薬代・GP/薬局の受診回数を減らせますので、定期的に服用する薬がある場合は、GP に 60 日処方が可能か尋ねてみてください。
6. 英語が難しくても ── 薬剤師・医師と母語で
薬の飲み方を正確に理解することは安全に直結します。英語が不便な場合は、無料の通訳サービスを利用して医師・薬剤師と母語でやり取りできます。
TIS National 無料通訳(131 450)
TIS National(Translating and Interpreting Service)は政府が提供する無料の電話通訳です。131 450 に電話して希望の言語を伝え、薬局・クリニックにつないでほしいと頼めば、薬剤師・医師と通訳を介して会話できます。多くの GP クリニックも診療時に通訳を直接つないでくれます。
薬のラベル・飲み方の確認
薬局で受け取った薬のラベル(服用回数・時間・食前/食後)を薬剤師に必ず確認してください。英語の説明が難しい場合は通訳を通じて再度説明を依頼し、アレルギー・他に服用している薬があれば必ず薬剤師に伝えてください。
7. 処方箋なしで買える薬(OTC)との違い
すべての薬に処方箋が必要なわけではありません。
- 一般用医薬品(OTC、over-the-counter):鎮痛剤(パラセタモールなど)・風邪薬・消化薬のような薬は、薬局・スーパーマーケットで処方箋なしに購入できます。これらの薬は PBS 補助の対象ではなく、定価で購入します。
- 薬剤師相談の薬(Pharmacist Only / Pharmacy Medicine):一部の薬は薬局のカウンターで薬剤師に相談した後にのみ購入できます。薬剤師に症状を説明すれば、適切な薬を案内してくれます。
- 処方医薬品(Prescription Only):抗生物質・血圧の薬などは必ず医師の処方箋が必要で、PBS の資格があれば補助を受けます。
症状が軽ければ、まず薬剤師に相談するほうが早く安価な場合があります。症状が重い、または長引く場合は GP の受診をおすすめします。
8. 公式の情報源リンク
- Pharmaceutical Benefits Scheme (pbs.gov.au)(新しいウィンドウで開く)
PBS 制度・薬代(co-payment)・Safety Net の公式案内
- PBS Safety Net thresholds (Services Australia)(新しいウィンドウで開く)
PBS Safety Net の上限・登録方法の案内(Services Australia)
- Reciprocal Health Care Agreements (Services Australia)(新しいウィンドウで開く)
RHCA 相互医療協定の対象国・資格・範囲の案内(Services Australia)
- Cheaper medicines (health.gov.au)(新しいウィンドウで開く)
薬代の引き下げ・60 日処方など最新の変更事項(保健省)
- eScript / electronic prescription (healthdirect)(新しいウィンドウで開く)
eScript(電子処方)の使い方の案内(healthdirect)
- TIS National (131 450)(新しいウィンドウで開く)
無料の電話通訳 ── 薬剤師・医師と母語で意思疎通(131 450)
上記の金額・資格・制度は毎年変動する可能性があります。薬代・Safety Net の上限・RHCA の適用可否は、常に上記の公式サイト(pbs.gov.au / servicesaustralia.gov.au / health.gov.au)で最新の情報をご確認ください。
あわせて読むと役立つガイド
薬代と処方はMedicare・医療の利用とつながっています。以下のガイドをあわせて読むと役立ちます。
よくある質問
RHCA 国の出身なら薬代の補助を受けられますか?▾
はい。オーストラリアと RHCA(相互医療協定)を結んでいる 11 か国(ニュージーランド・アイルランド・イギリス・スウェーデン・オランダ・フィンランド・イタリア・ベルギー・ノルウェー・スロベニア・マルタ)のパスポート所持者は、「医学的に必要な」診療と一部の PBS 薬を一般料金で受けられます。多くは Services Australia でのMedicare登録が必要で、ニュージーランド・アイルランドの訪問者は登録なしでも公立病院・PBS 薬を利用できます。詳しい資格は servicesaustralia.gov.au でご確認ください。
Medicareも RHCA もない場合、薬代はどのくらいかかりますか?▾
PBS 補助が適用されず、薬の実際の全額(private price)を支払うことになる場合があります。薬によって数十~数百ドルまで差が大きいです。観光ビザ・一部の一時ビザの場合は海外訪問者健康保険(OVHC)が薬代の一部を補える場合がありますので約款を確認し、高価な薬は薬局ごとに価格を事前に問い合わせてみてください。
Safety Net とは何ですか?▾
1 年間にご本人・ご家族が支払った PBS 薬代が上限を超えると、その後薬が安くなる制度です。2026 年時点で、一般患者は $1,748.20 を超えると残りの期間薬を $7.70(concession 料金)で、concession カード所持者は $277.20 を超えると無料で受け取ります。同じ薬局を継続して利用するか、薬剤師に Prescription Record Form を依頼すると、薬代が合算して記録されます。
処方箋なしで買える薬もありますか?▾
はい。鎮痛剤・風邪薬・消化薬のような一般用医薬品(OTC)は、処方箋なしで薬局・スーパーマーケットで購入できます(PBS 補助の対象外、定価での購入)。一部の薬は薬剤師に相談した後にのみ販売されます。抗生物質・血圧の薬など処方医薬品は必ず医師の処方箋が必要で、その際 PBS の資格があれば薬代の補助を受けます。