交通事故が起きたときの対応 — 情報交換・警察通報・保険請求
事故直後の停車・情報交換の義務から、警察への通報基準、CTPと総合保険の違い、保険請求とレッカー詐欺への注意まで、順を追って解説します。
事故直後、まずすべきこと
オーストラリアで交通事故に関わったドライバーには、必ず停車しなければならない法的義務があります。まず最初にすべきことは、自分と同乗者、相手の負傷の確認です。負傷者がいる場合や、火災・燃料漏れなどの危険な状況であれば、直ちに000(警察・救急・消防の統合緊急番号)に電話してください。負傷がなく車両が移動可能であれば、ハザードランプを点けて交通の流れを妨げない安全な場所へ車を移します。非緊急の警察通報は、多くの州で131 444(Police Assistance Line)が運用されていますが、州によって異なる場合があるため、お住まいの州の警察公式サイトで確認しておきましょう。動転しやすい瞬間だからこそ、本ガイドの順序(安全確保 → 情報交換 → 証拠確保 → 警察通報 → 保険会社への通知)を覚えておけば、落ち着いて対応できます。
停車義務 — ひき逃げは刑事犯罪です
事故後に停車せず現場を離れるひき逃げ(hit and run, fail to stop)は、オーストラリア全土で刑事犯罪であり、負傷者がいる場合は処罰が大幅に重くなります。「少し擦っただけのようだったが、急いでいたのでそのまま行った」というのも例外ではありません。駐車中の車に接触して所有者が不在の場合は、氏名と連絡先を書いたメモを残し、状況に応じて警察に知らせるのが各州の道路規則が求める対応です。逆に自分がひき逃げの被害に遭った場合は、車両情報をメモして直ちに警察に通報してください。
情報交換 — 何をやり取りすべきか
オーストラリア各州の道路規則は、事故当事者間の情報交換を法的義務と定めています。相手のドライバー、負傷者、財産被害を受けた人から求められた場合、自分の氏名・住所・車両登録番号(rego)を提供しなければならず、相手にも同じ情報を求める権利があります。これに加えて運転免許証、電話番号、保険会社の情報まで交換するのが慣行であり、その後の保険手続きがはるかにスムーズになります。情報は写真で残すのが、記載ミスを防ぐ最も確実な方法です。
現場で責任を認める発言は慎重に
相手の無事を気遣い、事実を確認することは問題ありませんが、「私のせいです」といった責任を認める発言や、その場での賠償の約束には慎重になるべきです。多くの自動車保険約款は、保険会社の同意なしの責任承認・示談を制限しており、違反すると補償手続きで不利になることがあります。事故直後は全体の状況(相手の速度超過、信号、道路状態など)をすべて把握できないため、過失の判断は警察と保険会社の手続きに任せるのが安全です。
- 法的義務のある情報 — 氏名、住所、車両登録番号(rego)。相手から求められた場合、提供する義務があります。
- 慣行として交換する情報 — 運転免許証(写真撮影)、電話番号、保険会社名・証券番号、車両の所有者が別人の場合はその所有者の情報。
- 現場の記録 — 双方の車両の損傷箇所・ナンバープレート・道路全体の状況・信号・標識の写真、目撃者の氏名と連絡先。
警察への通報 — いつ、どのようにすべきか
すべての事故を警察に通報しなければならないわけではありません。負傷者がおらず車両が自走可能な軽微な事故は、情報交換だけで完結することが多いです。ただし、通報義務の基準は州(state)ごとに異なるため、お住まいの州の警察の公式案内をあらかじめ確認しておくとよいでしょう。以下は、ほとんどの州で共通して通報対象となる状況です。通報時に発行される事件番号(event/report number)は保険請求に必要になることがあるので、必ず保管してください。
- 負傷者・死亡者の発生 — 直ちに000に通報します。人身被害を伴う事故は、事実上すべての州で警察への通報対象です。
- 車両のレッカー移動が必要、または道路上の危険 — 車両が自走できない場合や、破片・漏出物で道路が危険な場合。
- 相手の情報拒否、無保険・飲酒の疑い、ひき逃げ — 相手を特定できない場合や、犯罪が疑われるすべての場合。
オーストラリアの自動車保険の区分 — CTPは人身被害のみ補償します
オーストラリアの自動車保険は役割がはっきり分かれており、仕組みを知らないと事故後に大きく戸惑うことになります。重要なのは、車両登録(rego)とともに義務加入となるCTPは人身被害のみを補償し、車両・財産の被害は一切カバーしないという点です。つまりCTPだけの状態で事故を起こすと、相手車両の修理費を自己負担しなければならない可能性があります。以下の4つのタイプの違いを正確に理解し、ご自身の状況に合った補償を備えてください。
車両登録(rego)の際に義務加入となる強制保険です(NSWはGreen Slipを別途購入 — 州により運用方式が異なる)。事故で負傷した人の人身被害のみを補償し、車両修理費などの財産被害はカバーしません。州ごとに運営機関が異なります(NSWはSIRA、VICはTACなど)。
自分の車の被害と相手の車両・財産の被害の両方を補償する任意加入の保険です。保険会社・商品によってレッカー、レンタカー、ガラス破損などの付帯補償が異なるため、約款(PDS)を確認してください。新車の場合や修理費の負担が大きい場合に一般的に検討されるタイプです。
自分が起こした事故による相手の車両・財産の被害のみを補償し、自分の車の修理費はカバーしない任意加入の保険です。保険料が比較的安いため車両価額が低い場合によく選ばれますが、自分の車の修理は全額自己負担になる点を覚えておいてください。
Third party property damageの補償に自分の車の火災・盗難被害が追加された中間段階の商品です。ただし、通常の事故による自分の車の損傷は依然としてカバーされません。商品構成は保険会社ごとに異なるため、加入前にPDSで補償範囲を確認してください。
保険請求 — ステップ別チェックリスト
事故処理の成否は、現場での記録と通知の速さで決まります。過失の有無にかかわらずご自身の保険会社に速やかに通知することが約款上の義務である場合がほとんどで、すぐに請求する予定がなくても、相手が後から請求してくる可能性があるため、通知しておくのが安全です。人身被害の補償(CTP)には別途の手続きと期限があるので、各州のCTP機関で確認してください。
- 記録の整理 — 現場写真、相手の情報、目撃者の連絡先、事故の日時・場所・経緯のメモを一か所にまとめておきましょう。ドライブレコーダー(dash cam)の映像は上書きされる前に直ちにバックアップします。
- 保険会社への速やかな通知 — 過失の有無にかかわらず、できるだけ早く事故を届け出てください。多くの保険会社は24時間の事故受付電話・オンライン請求を運営しています。
- 警察の事件番号の確保 — 通報対象の事故だった場合は、event/report numberを受け取り、請求書類に添付してください。ひき逃げ・無保険の相手への請求では特に重要です。
注意点 — よくある5つのミス
事故直後は判断力が鈍りやすい時間帯です。実際によく起こる5つのミスをあらかじめ知っておくと、現場での損害を大きく減らせます。
- 現場での責任承認・その場での示談 — 保険会社の同意なしに責任を認めることは約款違反になり得るうえ、現金での示談後に相手が主張を変えると立証が困難です。事実確認と情報交換までにとどめてください。
- 「CTPがあるから修理費も補償される」という誤解 — CTPは人身被害専用です。財産被害の補償がない状態で事故を起こすと、相手の車の修理費を自己負担しなければならない可能性があります。
- 無許可のレッカー車の書類にサインする — 事故現場に先回りして現れ、サインを誘導した後に過大なレッカー費用・保管料を請求する事例があります。保険会社・警察を通じて確認するまではサインしないでください。