シェアハウス・下宿居住者の権利 — リースに名前がないとき
sub-tenant・boarder・lodgerの法的地位と州ごとの規定、書面での合意・記録で自分を守る方法、ボンド紛争や違法な退去強制への対応までまとめました。
本ガイドの範囲 — リースに名前が「ない」居住者
まず範囲を明確にします。正式なリース(賃貸借契約書)に名前がある入居者(co-tenant)は賃貸借法の全面的な保護を受け、別のレント・テナント権利ガイドの対象です。本ガイドはリースに名前がない人 — head tenantから部屋を借りたsub-tenant、大家・head tenantと同じ家に住むboarder/lodger — のためのものです。オーストラリアのシェアハウス・下宿の多くがこの形態であり、賃貸借法の保護が弱いか存在しない分、記録と書面での合意が事実上唯一の武器になります。
sub-tenant vs boarder/lodger — まず自分の立場を区別する
sub-tenantはhead tenantと別途の賃貸関係を結んで空間を占有する人で、書面契約があれば州によっては賃貸借法の一部または全部が適用されることがあります(転貸には通常、大家の同意が必要です)。boarder/lodgerは大家またはhead tenantと同じ家に住んで部屋を使う人で(boarderは食事の提供を含む下宿の概念)、ほとんどの州で賃貸借法の適用外、common lawの領域です。両者の境界は同居の有無・独立した占有の有無・契約形態によって分かれ、州ごとに基準が異なるため、自分の州のFair Trading・Consumer Affairsの基準を確認することが第一歩です。
入居前に必ずすべきこと — 書面での合意
法の保護が弱いほど、入居前の書面での合意が重要になります。紛争が起きたとき、「何を約束したか」を証明できる側が勝ちます。正式な契約書の書式でなくてもよく、メールやメッセージアプリで条件を整理して相手の確認をもらうだけでも大きな違いが生まれます。
書面での合意に必ず盛り込む項目
家賃と支払い周期、ボンドの金額と返還条件、光熱費(utilities)が含まれるかどうか、通知期間、ハウスルール(訪問者・掃除・騒音など)、そして食事提供の有無(下宿の場合)まで盛り込みましょう。項目が具体的であるほど、後になって「そんな約束はしていない」と言われるのを防げます。
- 家賃(金額・支払い周期)・ボンドの金額・含まれる費用(電気・ガス・水道・インターネット)を数字まで具体的に記載したか
- 自分が退去するとき・退去を求められるときの通知期間(notice period、例: 2週間)を双方に同一の条件で定めたか
- 文書に日付と双方の名前があり、署名または「その通りです」という相手の確認の返信が残っているか
金銭と状態の記録 — ボンド・家賃・写真
賃貸借法の適用外のboarder/lodgerの場合、ボンドを州の預託機関に預ける義務がないことがあります。つまりボンドが相手の手元にあるということなので、少額でも領収書と振込記録が返還紛争の重要な証拠になります。お金が動くすべての場面を記録に残してください。
- ボンドの領収書 — 金額・日付・受取人の名前を明記(少額でも必ず受け取ること)
- 家賃は銀行振込で — 摘要欄に「rent」と期間を記載。現金は避け、やむを得ない場合は毎回領収書を受け取る
- 入居当日に部屋・家具・設備の状態を写真撮影 — 退去時の損傷費用の請求から身を守る根拠になる
賃貸借法が適用される形態(書面のsub-tenancy、QLDのrooming accommodationなど)であれば、ボンドを州の預託機関に預けることが義務である場合があります。預託の要否と手続きは州のFair Trading・Consumer Affairsで確認してください。
州別・形態別の4つのケース
どの州に住んでいるか、どのような形態で住んでいるかによって、適用される法律がまったく異なります。代表的な4つのケースをまとめました — 自分の状況がどれに該当するかを確認し、詳細な要件は必ず該当州の公式サイトで確認してください。
head tenantと書面契約を結んだsub-tenantは、州によっては賃貸借法の保護(ボンドの預託、退去手続きなど)を受けられ、この場合head tenantが大家の役割を果たします。転貸(subletting)には通常、大家の同意が必要です。
boarder/lodgerはNSWの賃貸借法(Residential Tenancies Act 2010)の適用外ですが、一定人数以上が居住するなど登録対象のboarding houseにはBoarding Houses Act 2012に基づく居住原則(occupancy principles)が適用され、NCATで紛争を扱うことができます。
1部屋以上を賃貸し、合計4人以上が居住できる建物などの要件を満たすと、rooming houseとして登録義務があり、居住者には法定の権利と最低基準が適用されます。登録の有無はConsumer Affairs Victoriaで確認できます。
rooming accommodationは別の法律(Residential Tenancies and Rooming Accommodation Act 2008)で規律されており、ボンドはRTA(Residential Tenancies Authority)に預託し、紛争はRTAの調停を経てQCATに進むことができます。
紛争が起きたとき — 段階別の対応
紛争が起きたら、感情的に対応するのではなく、記録に基づいて段階を踏んでください。低い段階で解決するほど時間と費用が節約でき、高い段階に進んだ場合でも、前の段階の書面記録がすべて証拠になります。
- ステップ1 — 話し合いでの解決を試みつつ、合意した内容はすぐにSMS・メールで要約して残す
- ステップ2 — 書面での要求書を送る: 要求事項・根拠・期限を明記(ボンド返還なら返還先口座も含める)
- ステップ3 — 州のFair Trading・Consumer Affairsに無料相談 — 自分の形態に適用される法律と管轄を確認
- ステップ4 — 管轄の審判所(NCAT・VCAT・QCATなど)または少額民事手続きで申し立て — 手数料が安く、弁護士なしで進められる
よくある失敗と注意点
シェアハウス・下宿の紛争相談で繰り返し登場する失敗例です。ほとんどは入居前の10分の確認で防ぐことができます。
- 部屋を実際に確認する前にボンド・家賃を送金 — 典型的な賃貸詐欺の手口です。見る前に送金しないのが原則で、詳しい手口は詐欺予防ガイドを参考にしてください
- 「家族のような雰囲気」という言葉だけを信じて口頭合意で入居 — 紛争が起きたとき、証明できるものが何もありません
- 現金で家賃を払い領収書なし — 家賃を支払った事実すら証明できず、かえって滞納扱いされるおそれがあります
- 「リースに名前がないからどうせ権利がない」と、違法な退去強制やボンドの未返還を諦める — common law上の権利と少額審判の手続きは残っています