オーストラリア居住者の海外所得・資産申告 — 母国の不動産・利子・CRS自動情報交換
オーストラリア税法上の居住者は全世界所得を申告する必要があります。CRSにより海外の金融口座がATOに自動通知される仕組みとtemporary residentの例外、二重課税の調整(FITO)、自主開示の手続きまで、公式情報に基づいて整理しました。
オーストラリア税法上の居住者は全世界所得を申告する必要があります。CRSにより海外の金融口座がATOに自動通知される仕組みとtemporary residentの例外、二重課税の調整(FITO)、自主開示の手続きまで、公式情報に基づいて整理しました。
オーストラリアの税法上の居住者(Australian resident for tax purposes)は、オーストラリア国内で得た所得だけでなく全世界所得(worldwide income)をオーストラリアのtax returnに申告する義務があります。母国に残した不動産の賃貸所得、預金利子、株式配当、一部の海外年金、海外資産の売却益が代表的です。申告しないと加算税と利子が課される可能性があり、以下で説明するCRS自動情報交換があるため「申告しなければわからない」という前提は成り立ちません。
永住権・市民権がなくても税法上の居住者になる可能性があります。ATOはresides test(実際の居住実態)、domicile test(生活の本拠)、183-day test(会計年度中183日以上の滞在)、Commonwealth superannuation testの4つの基準で判定します。逆に一時ビザ保有者は、居住者と判定されてもtemporary residentの例外(セクション4)が適用される場合があります。2つの国を行き来して生活しているなど判定が曖昧な場合は個人の状況ごとの判断が必要になるため、TPB登録税理士に相談してください。
海外所得は別の申告書ではなく、毎年行うオーストラリアの所得税申告書(tax return)のforeign income項目に含めて申告します。オーストラリアの会計年度は7月1日〜6月30日で、本人が直接申告する場合は通常10月31日が期限です(登録税理士を利用する場合は延長可能)。すべての海外所得・控除・納付税額は豪ドル(AUD)に換算して記載する必要があります。
オーストラリアは多くの国と租税条約(tax treaty)を結んで課税権を調整しており、海外ですでに納めた税金はforeign income tax offset(FITO)としてオーストラリアの税額から控除できます。請求額がA$1,000以下であれば限度額の計算なしで請求できる簡素化規定もあります(最新の基準はATOで確認)。控除限度額と条約の適用は事案ごとに異なるため、計算はTPB登録税理士に任せるのが安全です。
本ガイドはオーストラリア側の義務のみを扱います。母国の税法上の申告・納税義務は、当該国の課税当局とその国の専門家に別途確認してください。個人別の税務アドバイスと申告代行は、オーストラリアの法律(Tax Agent Services Act)上、TPB登録税理士のみが提供できます。
代表的な申告対象は海外不動産の賃貸所得(ローン利子・管理費・減価償却などの控除はオーストラリアのルールに基づいて再計算)、預金利子・株式配当、一部の海外年金、海外資産売却のキャピタルゲイン(CGT)です。海外の法人・信託に持分がある場合はattributed foreign incomeの規定が適用されることがあるなど範囲が広いため、曖昧な項目は勝手に除外せず税理士と確認してください。
記録は一般的に申告後最低5年間保管する必要があります。外国語の書類は、求められた際に提出できるようあらかじめ整理しておくとよいでしょう。
海外所得の申告でよく出会う4つの状況です。自分がどれに該当するか確認してみてください。実際の適用は個人の状況によって異なる場合があります。
税法上の居住者(temporary residentの例外に該当する人を除く)は母国の賃貸所得をオーストラリアに申告します。控除はオーストラリアのルール基準で適用されるため、母国での計算結果をそのまま転記してはいけません。純損失の処理などの詳細は税理士と確認してください。
海外の預金利子と株式配当は、CRSによりATOに自動通知される代表的な項目です。少額でも申告対象であり、海外で源泉徴収された税金はFITOで調整できます。
居住者が海外の不動産・株式を売却するとオーストラリアのCGT対象となる場合があります。オーストラリア居住者になった時点の時価を取得価額とみなす規定などの特別ルールがあるため、売却前の税理士相談が必須です。
一時ビザ保有者の多くは、要件を満たせば大部分の海外所得が免除されます(一時居住者の身分で海外において行った労働所得など一部を除く)。ただし永住権取得時にこの例外がなくなる転換点となるため、取得の前後で必ず点検してください。
海外所得の申告は、結局のところ書類準備の勝負です。次の5つを習慣化すれば、申告シーズンに慌てずに済みます。
海外所得の問題は、その大部分が故意の脱税ではなく「知らなかった」ことから生じます。よく見られる5つの誤解を取り上げます。
海外・全世界所得の申告義務に関する公式案内 — 申告対象となる所得の種類とAUD換算ルール
税法上の居住者判定基準(resides・domicile・183日・superannuation test)と一時居住者の公式案内
CRS自動情報交換制度の公式説明 — どの金融口座情報がどのようにATOと交換されるか
自主開示(voluntary disclosure)の方法と加算税減額基準に関する公式案内
TPB登録税理士・BAS agentの公式登録簿 — 登録の有無と制裁歴の確認
ビザの種類と税法上の居住者判定は別物です。ワーキングホリデー・留学・就労ビザであっても、生活実態によっては税法上の居住者となる可能性があり、居住者であれば原則として全世界所得が申告対象になります。ただし、一時ビザ保有者の多くはtemporary resident(一時居住者)の例外により大部分の海外所得が免除される場合があるため、ご自身の判定はATOの公式基準とTPB登録税理士を通じて確認してください。
CRS(Common Reporting Standard)は金融口座情報を国家間で自動交換する国際基準で、オーストラリアは2017年7月から施行し、2018年に最初の交換を開始、100以上の国・管轄区域が参加しています。参加国の金融機関がオーストラリア税法上の居住者の口座残高・利子・配当などを自国の課税当局に報告すると、その情報がATOへ自動的に伝達されます。「海外口座は隠せばわからない」という前提はもはや成り立たない仕組みです。
母国での納税とは関係なく、オーストラリア税法上の居住者にはオーストラリアでの申告義務が別途存在します。ただし二重課税を防ぐため、租税条約(tax treaty)とforeign income tax offset(FITO)の制度があり、海外ですでに納めた税金をオーストラリアの税額から控除できます。控除限度額の計算や条約の適用は事案ごとに異なるため、TPB登録税理士に確認してください。
まず税法上の居住者かどうかを判定する必要があります。居住者であっても、一時ビザ保有者としてtemporary residentの要件(本人と配偶者の双方がSocial Security Act 1991上のオーストラリア居住者でないことなど)を満たせば、大部分の海外投資所得が免除される場合があります。ただし、一時居住者の身分で海外において行った労働の所得など一部は課税対象となるため、要件と例外の範囲は必ずATOの公式案内で確認してください。
永住権の取得などによりtemporary residentの身分が終了すると海外所得の免除がなくなり、その時点から母国の賃貸所得・利子・配当を含む全世界所得がオーストラリアの課税対象になります。CGT上、海外資産は一般的にその転換時点の時価で取得したものとみなされる規定があるため、時価の根拠資料をあらかじめ確保しておき、詳細な適用はTPB登録税理士と点検してください。
ATOのvoluntary disclosure(自主開示)制度により過去の申告を修正できます。ATOが調査・監査(audit)を通知する前に自主開示すれば、加算税(shortfall penalty)が一般的に最大80%まで減額される可能性があり、通知後は減額幅が大きく縮小します。複数年度にわたる場合や金額が大きい場合は、TPB登録税理士を通じて進めるのが安全です。
オーストラリア税法上の居住者(temporary residentの例外に該当する人を除く)が海外の不動産を売却すると、オーストラリアのCGT(キャピタルゲイン)申告の対象となる場合があります。取得価額はオーストラリア居住者になった時点の時価が基準となるなどの特別規定があり、母国で納めた税金はFITOで調整できる場合があります。金額の大きい事案なので、売却前に必ずTPB登録税理士に相談してください。