無給体験勤務・インターンシップ — どこまでが合法か(Fair Work基準)
「無給トライアル2週間」はほとんどの場合違法です。Fair Workの公式基準による合法な無給体験勤務の狭い要件とインターンシップの見分け方、未払い賃金への対応手順を整理しました。
「無給トライアル2週間」はほとんどの場合違法です
オーストラリアで求職していると、「2週間の無給体験(trial)の後に採用を決定する」といった提案を受けることがあります。新規移民やワーキングホリデーの求職者の間では通過儀礼のように思われることもありますが、Fair Work基準では、このような長期の無給トライアルはほとんどの場合違法です。オーストラリアでは、ビザの種類に関係なく働けば最低賃金以上を受け取る権利があり(Fair Work Act 2009、National Employment Standards — NES)、無給が認められるのは、以下で説明する非常に狭い例外のみです。
核心となる区分 — 「技術の実演」か、それとも「労働」か
Fair Work Ombudsman(FWO)の判断基準は、契約書の名称ではなく実態です。核心となる問いは「その時間の間、誰が主な利益を得たのか」です。応募者が技術を少し示しただけであれば採用のための評価かもしれませんが、接客をして売上に貢献するなど事業所が利益を得る生産的な労働を行ったのであれば、雇用関係が成立し賃金支払いの義務が生じます。「トライアル」「インターン」「体験」といった名称は、この判断に影響を与えません。
合法な無給トライアル(unpaid trial)の3つの要件
FWOが案内する合法的な無給トライアル(unpaid work trial)の要件は非常に狭いものです。以下の3つをすべて満たす必要があり、1つでも外れればその時間は有給の雇用とみなされる可能性があります。
認められる時間 — 「技術実演に必要な最小限の時間」
認められる時間は「その職務に必要な技術を実演するのにかかる時間」までです。FWOは職務の性質に応じて、数十分から数時間、長くても通常は1シフト(one shift)以内を目安として案内しています。例えばバリスタのトライアルであれば、コーヒーを数杯作って見せる程度で十分だという趣旨です。数日から数週間にわたる「トライアル」は、この基準を真っ向から外れています。
- 必要最小限の時間 — その職務の技術を示すのに必要な時間まで(職務に応じて数十分〜数時間、通常は1シフト以内)
- 直接の監督 — トライアルの間ずっと担当者の直接の監督のもとで実演すること(一人で店舗を任されればすでに労働)
- 採用判断が目的 — もっぱら採用の可否を評価するためのものであること(人手不足を埋める用途であれば労働)
無給が合法となる例外 — vocational placement(教育課程の必須実習)
Fair Work Act 2009は、vocational placement(教育課程の職業実習)を無給が合法となる例外として規定しています。ただし以下の要件を満たす場合にのみ該当し、「学生の身分である」というだけで無給が正当化されるわけではありません。学業課程と無関係に個人的に見つけたインターンシップは、この例外には含まれません。
- 教育課程の必須要件 — 学位・修了課程の必修科目(単位認定など)として組み込まれた実習であること
- 教育機関の斡旋・承認 — 大学・TAFE・RTOなどの教育機関を通じて承認・配置された実習であること
- 承認された教育・訓練課程 — 連邦・州の法令または行政手続き上、承認された課程の一部であること
状況別4つのタイプ — 自分のケースはどれに該当するか
実際の状況はさまざまですが、Fair Work基準では大きく4つのタイプに分けて考えることができます。自分の状況がどれに近いか確認してみてください。
採用判断のために直接の監督のもとで必要な最小限の時間(通常は1シフト以内)だけ技術を実演する場合。この狭い範囲内であれば、無給であっても適法である可能性があります。
学校のカリキュラム上必須で、教育機関が承認・斡旋したvocational placement。無給が合法ですが、要件から外れた業務への投入は例外にはなりません。
正規の従業員のように働き、事業所が主な利益を得る無給インターンシップ。雇用関係と判断されれば最低賃金とNESがすべて適用され、無給は違法です。
無給トライアルだけをさせて採用はしないパターン。複数の応募者に同じ提案を繰り返す事業所は、無給の労働力を得ようとするサインである可能性があるので注意してください。
賃金を受け取れなかったとき — 対応の5ステップ
無給で働いた時間が有給の労働に該当するなら、以下の順序で対応してください。給与明細(payslip)の確認ガイド、移民労働者の権利ガイドと併せて見ると役立ちます。
- まず記録を確保 — 出退勤時間のメモ、業務指示のメッセージ・メッセンジャーのキャプチャ、ロスター(勤務表)の写真、一緒に働いた人の名前まで。記憶は薄れても記録は証拠になります。
- 正当な賃金の計算 — FWO Pay and Conditions Tool(P.A.C.T.)で該当職種のaward最低時給を確認し、請求金額を算出してください。
- 雇用主に書面で請求 — メールなど記録が残る方法で勤務の事実と請求金額をまとめて支払いを求めてください。この段階で解決する場合も多くあります。
注意事項・よくある誤解5つ
現場でよく耳にする言葉の多くは、Fair Work基準とは異なります。以下の誤解には特に注意してください。
- 「ここではみんなそうしている」 — 慣行であっても違法は違法です。無給の長期トライアルがよくあるという事実は、合法の根拠にはなりません。
- 「試用(probation)期間だから無給」 — 試用期間も最初の1時間から有給です。試用は無給の根拠にはなりません。
- ビザの心配から沈黙する — FWOへの通報はビザの状態と無関係であり、要件を満たせば、現在運用中の申告者保護制度に基づき、就労に関するビザ条件の違反を理由にビザが取り消されないよう保護を受けられることがあります。
役立つ公式リンク
- Fair Work Ombudsman — Unpaid work(新しいウィンドウで開く)
無給労働全般の合法・違法の基準に関する公式案内 — トライアル・インターンシップ・ボランティア・学生実習の区分
- FWO — Work experience & internships(新しいウィンドウで開く)
インターンシップやwork experienceが雇用関係に該当するかを判断するFair Workの公式基準
- FWO — Pay and Conditions Tool (P.A.C.T.)(新しいウィンドウで開く)
職種・awardごとの最低時給を計算する公式ツール(P.A.C.T.) — 未払い賃金の請求金額の算出に使用