市民権取得後の市民の義務 — 選挙人登録・義務投票・陪審員召喚
市民権取得後に新たに生じる3つの法的義務 — 21日以内の選挙人登録、義務投票、陪審員召喚への対応 — を公式手続き中心に案内します。
市民権取得後に変わること — 市民の義務の概要
オーストラリア市民権を取得すると、パスポートの発給・領事保護といった権利とともに、法律で定められた市民の義務が生じます。代表的なものが①選挙人登録(electoral enrolment)、②義務投票(compulsory voting)、③陪審員任務(jury duty)です。3つとも任意ではなく法的義務であり、履行しない場合は通知・罰金などの後続手続きが行われる可能性があります。本ガイドはAEC(オーストラリア選挙管理委員会)、州選挙管理委員会、州裁判所の公式手続きのみを基準にまとめています。
永住権者と市民権者の違い
永住権者(PR)は原則として連邦・州選挙の投票権がなく、投票義務もありません。市民権を取得した瞬間から選挙人登録と投票が義務となり、選挙人名簿(electoral roll)に載ると陪審員の召喚対象にも含まれます。市民権セレモニーは、権利とともにこれらの義務が始まる時点であることを覚えておいてください。市民権の申請手続き自体については、別途の市民権ガイドをご参照ください。
選挙人登録(Enrolment) — 市民権取得後21日以内
オーストラリア市民は満18歳以上であれば選挙人登録が法的義務であり、市民権取得などで登録資格が生じたら21日以内にAECに登録しなければなりません。多くの地域では市民権セレモニーの会場でAECが登録を案内したり用紙を配布したりしているため、セレモニー当日にその場で登録するのが最も確実です。満16~17歳も事前登録(provisional enrolment)が可能で、実際の投票は18歳からです。
オンライン登録の手続き
aec.gov.auの「Enrol to vote」ページからオンラインで登録します。本人確認のために運転免許証、オーストラリアのパスポート、市民権証書の情報のいずれかが必要で、ない場合はすでに登録済みの有権者による確認署名で代替する方法が案内されています。登録が完了したかどうかは、AECの「Check my enrolment」サービスでいつでも確認できます。
- 市民権証書(citizenship certificate)の番号、または運転免許証・オーストラリアのパスポートなど本人確認手段の準備
- 現在の居住地の住所で登録 — 選挙区(electorate)と投票所は住所を基準に決まる
- 引っ越しのたびに住所を更新 — 住所変更の届出も初回登録と同じ義務
義務投票(Compulsory Voting) — 不参加時の手続き
オーストラリアは登録された有権者の投票が法的義務となっている国です。連邦選挙・州選挙はもちろん、ほとんどの州では地方選挙(local council election)も義務であり(州により異なる)、多くの他国にはない制度のため、新しい市民が最も見落としやすい部分です。投票日に直接行くのが難しい場合は、期日前投票・郵便投票・海外投票などの公式な代替手段が用意されているため、「行けない」ではなく「どの方法で投票するか」を決めるのが基本です。
- 投票記録がない場合、選挙後に不参加の説明を求める通知(apparent failure to vote notice)が郵送される
- 通知を受け取ったら、期限内に正当な理由(valid and sufficient reason)を説明するか、案内された行政罰金を納付
- 通知に回答しないと、金額が増えたり裁判所手続きに移行したりする可能性がある — 通知の無視が最悪の対応
投票方法 — 優先順位投票制(Preferential Voting)と投票オプション
オーストラリアの連邦選挙は優先順位投票制(preferential voting)を採用しています。候補者名の横の欄に希望順位を数字で記入する方式で、記入ルールを守らないと無効票(informal vote)になるため、方法を事前に知っておくことが重要です。公式の記入案内は、投票所とAECのウェブサイトで多言語で提供されています。
下院(House of Representatives)の投票用紙は、すべての候補者の欄に1から順番に漏れなく番号を記入しないと有効になりません。1つでも欄を空けたり、同じ数字を重複して書いたりすると無効になる可能性があります。
上院(Senate)の用紙は、太い線の上の欄(above the line)に最低6つのグループを順番に記入するか、下の欄(below the line)に最低12名の候補者を順番に記入する、2つの方式のうちいずれか一方だけを選んで記入します。
投票日に勤務・旅行などで行けない場合は、指定された期日前投票所(early voting centre)を利用するか、AECに郵便投票(postal vote)を申請できます。申請資格と期限は選挙ごとに公示されるため、事前にご確認ください。
海外滞在中は、一部の在外公館などに設置される海外投票所や郵便投票を利用でき、長期の海外居住についてはAECに届け出る別途の手続きがあります。英語が難しい場合は、TIS National(131 450)の通訳、AECの多言語資料、投票所スタッフの支援を受けられます。
陪審員(Jury Duty)召喚 — ステップ別の対応
選挙人名簿に載ると陪審員の召喚対象になります。陪審員は選挙人名簿から無作為に選ばれ、管轄は州政府です — NSW州はSheriff of NSW(courts.nsw.gov.au)、VIC州はJuries Victoria(juriesvictoria.vic.gov.au)が運営しています。召喚通知(jury summons)を受け取ったときの対応手順は次のとおりです。
- 期限内に回答 — 通知書に案内されたオンライン・郵送の方法で必ず返信(出頭の有無にかかわらず、回答すること自体が義務)
- 資格の確認 — 特定の職業・前科など、州ごとの欠格(disqualified)・対象外(ineligible)の基準に該当するかを、通知書と州裁判所の案内で確認
- 免除・延期の申請 — 英語が困難、介護・育児、自営業の運営困難、健康上の問題など、州裁判所が案内する事由に基づき免除(excusal)・延期(deferral)を申請可能 — 認められるかどうかは裁判所が個別に判断
注意事項 — 新しい市民がよくする間違い
選挙・陪審員制度は母国に類似の制度がないことが多く、知らないまま見落とす間違いが繰り返し見られます。次の5つを守るだけでも、ほとんどの問題を予防できます。
- 21日の登録期限を逃す — 市民権セレモニー当日の会場での登録機会を活用し、遅れてしまった場合でも気づいた時点ですぐ登録(登録義務は時間が経っても消えない)
- 引っ越し後の住所未更新 — 旧住所に通知が届き、投票不参加通知・陪審員召喚を見逃す代表的な原因。住所変更も法的義務
- 投票用紙の番号の記入漏れ・重複 — 下院の用紙はすべての欄を埋めないと有効にならない。書き間違えた場合は、投票箱に入れる前に投票所のスタッフに新しい用紙を求める